○御嵩町環境基本条例

平成14年4月1日

条例第9号

21世紀は「環境の世紀」です。

20世紀を振り返ってみれば、人類はひたすら物質的な豊かさ、生活の利便を求めて、さまざまな開発を進めるとともに、大量生産、大量消費、大量廃棄の果てしないシステムを拡大してきました。その結果、日本をふくむ先進国の人々は確実に豊かさと利便性を手に入れることができました。

その反面、環境の破壊が地球規模で進行し、20世紀末には環境破壊が誰の目にも明らかになってきました。過去の世紀のような人間活動を続けていくと、やがて近い将来、取り返しのつかない事態になる必然性を深く認識しなければなりません。

21世紀初頭のいま、私たちは人類共通の最優先テーマである環境問題に真しに、かつ着実に取り組まねばなりません。

木曽と飛騨の山々と濃尾平野が接するところに位置する御嵩町は、里山の町です。里山は自然と人間がせめぎあうところであり、自然と人間がいかに折り合いをつけていくか試されている「環境前線」の町であります。

御嵩町では20世紀末、産業廃棄物処理場の建設をめぐり全国初の住民投票を実施した結果、町民の大多数が「大量生産・大量消費・大量廃棄のシステム」より「健康に生きていける環境」を選択しました。「カネ」より「命」の選択でした。

地球環境破壊の世紀から地球環境保護の世紀へ、時代の転換点にあたり、御嵩町では町の特性である自然と人間の資源を活かしつつ、先人たちから受け継いだ豊かな環境を後世の人たちに引き継いでいくよう努めなければなりません。

このような認識のもと、町、事業者と町民が一体となって、良好な環境の保全と快適な環境の創造に取り組むことにより、「安心して暮らせる町」を目指すために、この条例を制定します。

(目的)

第1条 この条例は、良好な環境の保全と快適な環境の創造(以下「環境の保全と創造」といいます。)についての基本的な考え方を定め、町、町内で事業を行う事業者(以下「事業者」といいます。)と町民の責務を明らかにするとともに、環境の保全と創造に関する施策の基本的な事項を定め、これに基づく施策を総合的かつ計画的に推進することにより、現在と将来の町民が健康で文化的な生活を営むことができるようにすることを目的とします。

(定義)

第2条 この条例において「良好な環境の保全」とは、先人たちより受け継いだ可児川、里山や中山道などの恵み豊かな環境を現在と将来の町民が享受できるように保護することをいいます。

2 この条例において「快適な環境の創造」とは、人間のみならず多様な動植物が共に生きるために最適な環境水準の向上を図ることをいいます。

3 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全と創造への支障の原因となるおそれのあるものをいいます。

4 この条例において「地球環境の保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化やオゾン層の破壊の進行、大気の汚染、水質の汚濁、野生生物の種の減少、放射性物質や化学物質による汚染その他の地球全体やその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に対する環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに町民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいいます。

5 この条例において「公害」とは、環境の保全と創造をするうえで、支障となるもののうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭などによって、人の健康や生活環境に関係する被害が生ずることをいいます。

6 この条例において「環境マイスター」とは、環境に配慮して、リサイクルや廃棄物の削減、減量に取り組んでいる人、自然の素材を活かしたものづくりをしている人、地域の自然環境に造けいの深い人などをいいます。

(基本的な考え方)

第3条 何人も良好で快適な環境を享受する権利を有します。

2 環境の保全と創造は、環境に本来備わっている自浄能力を超える環境への負荷を与えると元に戻れなくなるという特性を考慮して、適切に行わなければなりません。

3 環境の保全と創造は、すべての者がそれぞれの立場で、環境への負荷の極力少ない循環型社会を構築するために積極的に行わなければなりません。

4 環境の保全と創造は、すべての者が人と環境とのかかわりについての理解と認識を深め、自主的かつ積極的に参加し、公平な役割分担のもとに協力することによって実現されなければなりません。

5 環境の保全と創造は、地域の環境が地球全体の環境と深く関わっていることを考慮して、地域でのすべての事業活動と日常活動において積極的に進めなければなりません。

(町の責務)

第4条 町は、町内の清浄な大気、水、土壌、森林と野生動植物を現在と将来の町民のために保全する責務や保護する責務があります。

2 町は、町が実施する環境の保全と創造にかかわる行為について、情報の提供と住民参加の手続きを整備する責務があります。

3 町は、第3条に定める基本的な考え方にのっとり、環境の保全と創造に関する総合的かつ計画的な施策を定め、実施する責務があります。

4 町は、自然的社会的条件に応じ、次の各号について積極的に取り組まなければなりません。

(1) 人と自然が共生する恵み豊かな環境を実現するため、野生生物の種の保存や生物の多様性の確保を図るとともに、里山や水辺などにおける自然環境を保全すること。

(2) 潤い、安らぎ、癒しなどの心の豊かさが感じられる社会を実現するため、良好な自然の保全を図りつつ、歴史的文化的遺産の保存、景観の保全、快適な環境の創造を推進すること。

(3) 環境への負荷の少ない循環型社会を構築し、地球環境の保全を実現するために、廃棄物の発生抑制、資源のリサイクルとエネルギーの適正で効率的な利用を推進すること。

(4) 環境の保全と創造のために、環境に関する活動と地域の環境学習の中心となる者を環境マイスターとして認定し、その活動を奨励すること。

(事業者の責務)

第5条 事業者は、第3条に定める基本的な考え方にのっとり、事業活動を行うに当たって、公害を発生させないようにするとともに、環境を適正に保全するために必要な措置をとる責務があります。

2 事業者は、第3条に定める基本的な考え方を尊重し、事業活動を行うに当たって、環境への負荷の低減のために、廃棄物の発生抑制、省エネルギーとリサイクルを推進するなど、資源の有効利用に努める責務があります。

3 事業者は、事業活動を行うに当たって、環境の保全と創造に役立てるため、環境保全と創造に関する協定の締結など町や町民が実施する施策に自ら積極的に協力する責務があります。

(町民の責務)

第6条 町民は、第3条に定める基本的な考え方にのっとり、自らの生活スタイルが環境に負荷を与えていることを認識して、積極的に環境を愛する心と意思を持つように努めなければなりません。

2 町民は、環境を愛する心と意思を持って省エネルギーやリサイクルなどの推進による資源の有効利用を行い、環境への負荷の低減に努める責務があります。

3 町民は、地域で協力して、環境の保全と創造に関する自主的な活動に努める責務があります。

4 町民は、環境の保全と創造に関して、町の実施する施策に積極的に参加するよう努める責務があります。

(環境基本計画)

第7条 町長は、環境の保全と創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために、御嵩町環境基本計画(以下「環境基本計画」といいます。)を定めます。

2 環境基本計画は、環境の保全と創造についての長期的な目標と施策の基本的な事項について定めます。

3 町長は、環境基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ町民の意見を反映するために公聴会・パブリックコメントなど必要な措置をとるとともに、第19条の規定により設置する御嵩町環境審議会の意見を聞かなければなりません。

4 町長は、環境基本計画を定めたときは、速やかにこれを公表しなければなりません。

5 環境基本計画を変更しようとする場合にも、第3項第4項に定めた手続きにより行います。

(町の事業の策定に当たっての配慮)

第8条 町は、環境への負荷を少なくするため、町が行う事務事業全般において、環境基本計画にのっとり、環境の保全と創造について優先的に配慮します。

2 町は、町が実施する事業のうち環境に著しい影響を及ぼすおそれのあるものについて、環境の保全と創造のために適正な配慮がなされたか、環境の保全と創造の観点から最良の選択であるかなどの調査を行い、環境に著しい負荷を与えると判断した場合は、環境への負荷の低減のためにその事業の変更や修正などの措置をとります。

(年次報告)

第9条 町長は、町の環境の現状や環境の保全と創造に関係する施策などについて年次報告を作成し、御嵩町環境審議会の意見を付けてこれを公表します。

(環境影響評価の推進)

第10条 町は、事業者が行う土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業(国や県の事業を除く。)のうち、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業を指定し、事業者自らに環境影響評価(環境アセスメント)を行わせることができます。

2 第1項に定める環境影響評価を行った事業者は、その評価結果に基づき環境の保全と創造について適正に配慮しなければなりません。

3 第2項の事業者は、環境影響評価の結果及び環境の保全と創造について配慮した結果を町に報告しなければなりません。

(規制的措置)

第11条 町長は、良好な環境の保全に支障を及ぼす行為や公害の原因となる行為を行う者に対し、必要な助言、勧告や規制の措置をとります。

(誘導的措置)

第12条 町は、環境への負荷を生じさせる活動を行う者に対して、特に必要があると認めるときは、事前に十分な調査研究を行ったうえでその負荷を低減するために適正な経済的負担を課したり、これを軽減するための必要な措置をとります。

(支援的措置)

第13条 町は、環境への負荷を生じさせる活動を行う者が自発的にその負荷を減らすために施設の整備その他の有効な措置をとれるよう、財政的な支援を行うことに努めます。

2 町は、環境への負荷を低減させる活動を積極的に行う者に対し、表彰などの奨励的措置を行うことに努めます。

(環境学習等の推進)

第14条 町は、町民、事業者やこれらの者を構成員とする団体(以下「民間団体」といいます。)が環境の保全と創造についてより理解を深め、その活動を行う意欲を増進するよう環境学習の機会の積極的な提供など必要な措置をとります。

2 町は、町内の子どもたちが幼いときから環境を愛する心と意思を育むことができるように学校教育の場において、環境の保全と創造に関する体験型学習の機会の積極的な提供など必要な措置をとります。

3 町は、環境マイスターが中心となって地域の環境教育と環境学習を進めていくために必要な措置をとります。

(民間団体等の自発的な活動を推進するための支援)

第15条 町は、町民、事業者や民間団体が自発的に行う緑化活動、環境美化活動、資源回収活動その他の環境の保全と創造に関する活動が促進されるように必要な支援を行います。

(環境情報の収集と提供)

第16条 町は、町の環境の状況及び環境の保全と創造に関する情報の収集に努めるとともに、町民、事業者や民間団体に対し必要な情報を積極的に提供するよう努めます。

(調査等の実施)

第17条 町は、環境の保全と創造に関する施策を積極的に推進するために町内の環境に関する現状調査と町に影響を及ぼす近隣の環境に関する状況把握に努めます。

(広域的連携)

第18条 町は、地球環境の保全その他広域的な取組みを必要とする施策を実施するときは積極的に国、県、他の市町村と民間団体及びNPO(特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定する「特定非営利活動法人」をいいます。)と連携し、協力するよう努めます。

(御嵩町環境審議会の設置)

第19条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の定めるところにより、御嵩町環境審議会(以下「審議会」といいます。)を設置します。

(審議会の組織)

第20条 審議会は、委員10人以内で組織し、次に掲げる者の中から、町長が委嘱します。

(1) 町民

(2) 事業者

(3) 民間団体やNPOの代表者

(4) 環境マイスター

(5) 識見を有する者

2 委員の任期は2年とし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とします。ただし、再任を妨げるものではありません。

3 委員の内、第1項第1号の委員は、公募で選びます。

4 審議会に特別な事項を調査し、審議させるため必要があるときは、臨時の委員を置くことができます。

(審議会の所掌事務)

第21条 審議会は、町長の諮問に応じて次の事項を調査及び審議し、意見を述べます。

(1) 環境の保全と創造に関する基本的事項や重要事項

(2) 環境基本計画の策定、変更と評価に関する事項

(3) 年次報告書に関する事項

(4) その他、環境の保全と創造に関して町長から意見を求められた事項

2 第1項に定めるもののほか、審議会は、環境の保全と創造に関する事項について必要があると認めるときは、町長やその他関係機関に意見を述べることができます。

(御嵩町環境オンブズパーソンの設置)

第22条 町は、環境の保全と創造のため町民が申し立てた町の事業や事業者の事業活動に関する苦情を中立的立場から処理するため、御嵩町環境オンブズパーソン(以下「環境オンブズパーソン」といいます。)を設置します。

(環境オンブズパーソンの組織)

第23条 環境オンブズパーソンの定数は3人とし、そのうちの1人を代表環境オンブズパーソンとします。

2 環境オンブズパーソンは御嵩町の自然、歴史、文化などに識見がある者の中から、町長が委嘱します。

3 環境オンブズパーソンの任期は3年とし、再任を妨げません。

(苦情の調査及び勧告等)

第24条 町民は、環境オンプズパーソンに対して環境の保全と創造に関し、町の事業や事業者の事業活動に関する苦情の申し立てを行うことができます。

2 環境オンブズパーソンは、第1項の苦情を処理するため必要があると認めるときは、町に対し情報提供を求めたり、実地調査をすることができます。

3 環境オンブズパーソンは、第22条に規定する事業者や関係機関に対し、情報の提供や実地調査について必要と認めるときは、協力を求めることができます。

4 環境オンブズパーソンは、苦情の調査の結果について苦情申立人に速やかに通知します。

5 環境オンブズパーソンは、苦情の調査の結果必要があると認めるときは、町長に対し、是正等の措置を講ずるよう勧告することができます。

6 環境オンブズパーソンは、苦情の調査の結果必要があると認めるときは、町長に対し、制度の改善を求めるための意見を表明することができます。

7 環境オンブズパーソンは、苦情の調査の結果事業者に対し必要があると認めるときは、是正等の措置を講ずるよう意見を表明することができます。

(町長の責務)

第25条 町長は、第24条第5項第6項に規定する勧告や意見表明を尊重し、必要な措置をとる責務があります。

2 町長は、第24条第5項第6項第7項の勧告や意見表明と第1項の措置を審議会に報告し、町民に公表します。

(委任)

第26条 この条例の施行について必要な事項は、町長が別に定めます。

附 則

この条例は、規則で定める日から施行します。

(平成15年規則第11号で平成15年4月1日から施行)

御嵩町環境基本条例

平成14年4月1日 条例第9号

(平成15年4月1日施行)

体系情報
第8編 生/第5章 環境保全
沿革情報
平成14年4月1日 条例第9号